悪の存立条件

悪の存立条件

○悪徳の栄え

卑怯、卑劣、卑俗、臆病、偽善、酷薄、放縦、抑圧、画一、差別、残忍…と、「悪徳」に該当すると思われる言葉を思いつくままに書き起こしてみました。

さて、こういった悪徳が世に蔓延してしまう条件とは、一体どんなものでしょうか。18世紀の英国で活躍した政治家、エドマンド・バークは言います。

All that is required for evil to triumph is that good men do nothing.

カチコチの訳:悪が勝利をおさめるために必要なことの全ては、善人が何もしないことである。

思い切って言い直すと:悪が勝利をおさめるには、善人が何もしない、ただそれだけでよい。

つまり、悪が蔓延するのは、それを積極的に推進するものがあるから、というわけではない。むしろ、制するものがないという意味で助長する環境がありさえすれば、いとも簡単に蔓延してしまうわけです。

○居場所を与えられない「美徳」という「価値」

さて、いじめです。

加害者家族や学校、教育委員会などの責任、加害者の矯正など、原因や今後の対応をめぐる様々な議論が行われています。またおそらく学校では、「命の大切さ」が改めて説かれていることでしょう。

不思議に思うのは、悪徳に対する美徳、例えば、勇敢であること、公正を重んじること、気高いこと、寛容であることなどといった、追求すべき価値に関する言葉が、全くと言ってよいほど聞こえてこないことです。

そういった価値に照らし合わせて考えると、弱いものをいじめるのは卑怯であり、それを見過ごすのは臆病であり、また、自己保身であり、そういった現状を尻目に綺麗ごとを説くのは偽善である―と言えます。

通り一遍の対応では、おそらく何も変わらないでしょう。制度いじりも同様です。結局のところ、追求すべき価値が、日常において明確な地位を与えられていない現状では、悪徳は蔓延したまま、その猛威はとどまることを知らないでしょう。

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