第三者評価の記事一覧

評価受審、その後

久方ぶりの更新となります。

評価の受審を踏まえて発信することが出来る「事業者コメント」という欄があります。

活用されることの少ない欄ですが、当社による26年度の評価結果を踏まえたコメントが更新されておりますので、紹介させて頂きます。

※以下、ふくナビ該当ページ (ページ下部)より引用

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*以下の項目は事業者によって、自ら更新される情報です。

目黒区第三園目の指定管理園として開園し3年を経ての第三者評価受審でしたが、この3年間の園運営の総括となり、園の保育理念、運営についての基本部分の全職員の再確認となり、意識共有の契機となりました。

保護者の皆様にはご多用の中アンケートに多数ご協力いただきありがとうございました。数字に於いての回答だけでなく、具体的なご意見、ご要望、お励ましをいただきました。改めて、保育園は子どもを真ん中に、保護者と職員という大人が子どもの育ちを見守り支え合う場であるということを感じ、保護者の皆様とのこの3年間の本園の歩みの上に今があることに、職員一同感謝しております。

また、調査機関のご助言から、私達がまず大切にしたい「ひとりひとりの子どもの心に寄り添う保育」「子どもの主体性を尊重する保育」を深めるべく、視点の共有、職員育成の観点から、早速、次年度に向け日誌の記載項目の見直し等討議、改訂を行いました。

今後も、子どもが安心して育ちあえる場、保護者と子育ての喜びを共有できる保育園を目指し、職員一同心を合わせて取り組んでまいります。

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当社との関わりを活かして頂き、大変ありがたく思います。

今後とも、事業者の皆様のお役に立てるよう、引き続き、取り組んでまいります。

2016年05月19日 | 評価受審、その後 はコメントを受け付けていません | トラックバックURL |

カテゴリ: 第三者評価

課題の指摘、その作法

○紹介の仕方、され方 

三谷さん(仮名)は30代男性。

時々飲み過ぎて自転車で転倒。ひどい時は一晩に2度転倒。朝起きて頭にかさぶたを発見することもある。だが、仕事はそこそこ頑張っている様子。 

さて、そんな彼、既婚者と間違われることもあるが、実は独身。 

 

こんな人物が知り合いにいたら、どのように紹介しますか。 

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 「・・・が出来ていない」「・・・するには至っていない」などと書かれている報告書を時々見かけます。 

例えば、

・個人別の育成計画については、作成できていない

・マニュアル化するには至っていない

などなど。

 

そんな時、私は心の中で叫びます(評価機関内では一層の発信・浸透が必要です、すなわち、わたくしたちの課題です)。

「やめてくれ~」

「やっていないことは書かないでくれ~」

「どうしても書きたい時は、書き方をもう少し考えてくれ~」

 

このあたり、少しばかり説明が必要かもしれません。

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○根拠を確認する

何かを「行っていない」という事実があったとします。

大切なのは、「行っていない」という事実に、根拠があるか否か、ということです。

つまり、理念に基づいて「必要ない」という判断のもとに「行っていない」場合、原則、指摘する余地はなくなります。

では、指摘する必要があるのはどんなケースでしょうか。

それは、「行っていないこと」が、「行うべきこと」であると、理念から導くことが出来る場合です。

すなわち、

「行っていないこと」

理念に照らし合わせて、必要ではあるが、「現状では出来ていないこと」

「今後、行っていくべきこと」

という場合です。

また、理念とは、事業者さんが大切にしている考えですので、

理念から導くことが出来る=潜在的に必要としている、求めている

と解釈できます。

そうすると、

「行っていないこと」「今後、行っていきたいこと」

と捉え直すことも出来ます。

 

従って、「行っていない」という事実に何らかの意味を与える際には、必要だが「出来ていないこと」なのか、根拠があって「行っていないこと」なのか、確認する必要があります。

○表現方法を考える 

そして、さらに大切になってくるのは、指摘する際の方法です。

もし、「行っていないこと」を

「・・・が出来ていない」

と表現してしまうと、なんとも後ろ向きで、未来への展望が見えません。

 

さきほど、理念に照らし合わせて、必要ではあるが「行っていないこと」とは、

「今後、行っていくべきこと」であり、「今後、行っていきたいこと」である、

と述べました。

「今後、・・・」とある通り、課題とは、視点を前に据えるもの、未来への展望を示すものです。

これを踏まえると、

「・・・が出来ていない」

ではなく、

「・・・していくことを課題としている」

「・・・したいと考えている」

「・・・していく方針である」

などとするほうが、将来に対する積極性という、課題の持つ前向きな性格がより良く表現されます。

言い換えれば、その事業所が今後どこに向かって歩んでいこうとしているのか、積極的な姿勢と合わせて、向かうべき方向性がより伝わりやすくなります。

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もし、身近に三谷さん(仮名)30代男性のような人がいたら、「結婚できていない人」「結婚するには至っていない人」などと言うのは、やめてあげて下さい。

ひょっとしたら、「今後、結婚したいと考えている人」かもしれません。

新年度を控え、改めて評価に対する姿勢について

「福祉の現状について語る」と大見得を切っておきながら、長らく開店休業中のブログですみません。

さて、当社の現状ですが、おかげさまで、すべての案件が(ほぼ)終了いたしました。今年度も、評価事業を通じて多くの素晴らしい事業者様とのご縁を頂きました。継続的なご依頼、事業者様によるご紹介、自治体の入札を含め、ご依頼頂いた事業者様の数は52にのぼります。本当にありがとうございました。

今年度の山場は、○○区の認可保育園16園の評価でした。幸いなことに、どの園長先生からも、概ね、「実情を正確に捉えて頂いた」とのお言葉を頂戴しました。また、主管課の長からは、「毎年、評価者に関するクレームが多数寄せられますが、今回はゼロでした(笑顔)」とのお言葉を賜りました。本当にありがたい限りです。

ここで、改めまして、当社の姿勢・方針を申し上げます。

当社は、福祉施設の利用者と事業者をつなぐメディアとして、業務の改善や質の向上の触媒として、「第三者評価」の活動を行っています。

あくまでもメディアです。事業者の上に立って「あーだこーだ」言うものではありません。つまり、手法に着目すれば、評価とは本質的には「インタビュー」です。

また、インタビューでは、これまでの取り組みの蓄積としての現在をもとにしつつ、今後向かうべき将来についてお聞きしています。この意味で、評価とは「プラスのアセスメント」です。

いずれにいたしましても、評価とは、コミュニケーションの一類型です。

では、評価というコミュニケーションで大切な点とはなんでしょうか。

これは、「経営的な視点が大切なんですよ~」とご高説を垂れる大変ご立派な見識をお持ちの経営コンサルタントのオジサマ集団には致命的に欠けている点です。

ある学者は、ワーグナーのオペラ『パルジファル』を例に言います。

・・・・もの知らずのパルジファルが漁夫王に向かって適切な質問をしなかったことから、王国の荒廃がはじまっている。適切な質問はコミュニケーションを生む。荒廃はコミュニケーションの疎外をきっかけとして、人の心の世界に拡がっていくのだ(。)

中沢新一(2009年)『緑の資本論』ちくま学芸文庫 pp.32-33

当社にも、高齢者の介護や障害者の支援、子どもの保育などの分野で経験を積んだ評価者が多数おります。この貴重な経験に基づく専門的な知識は、評価においては、聞く姿勢があってこそ活きてきます。

当社は今後とも、事業者様の、「これまでの取り組みの蓄積としての現状」や「将来への積極性としての課題」などを可能な限り正確に把握し、表現し、伝達するメディアとしての役割を果たすべく、真摯に取り組んでまいります。