怒る、嘆く、その前に

怒る、嘆く、その前に

○人にダメ出ししたものの・・・ 

「結婚に対するレインの考え方は、いささか、たるんでるぞ。実際、下流階級が我々に手本を示さないとすれば、一体、彼らは何の役に立つというんだ。どうやら彼らには、一つの階級として、まるで道徳的な責任感がないようだ。」 

これは、オスカー・ワイルドの喜劇『真面目が肝心』の中で、召使である「レイン」のだらしなさにあきれた主人公が口にするセリフです。

さて、何故ワイルドは、下流階級に道徳的な責任感(立派な立ち居振る舞いを見せる責任)を求めるようなセリフを、上流階級の主人公に言わせたのでしょうか。

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そもそも、①「上流階級は、下流階級に対して、模範を示す責任がある」と、ワイルドは考えます。

それはおそらく、②「下流階級は、上流階級の言動を真似るから」でしょう。

ということは、③「下流階級の言動がだらしがないのは、上流階級の言動がだらしがないから」ということになります。

つまり、ワイルドは、下流階級のだらしなさを上流階級の主人公に嘆かせることを通じて、実は、上流階級のだらしなさ、「道徳的な責任感」の欠如を皮肉っているわけです。

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上下の関係を、階級としてではなく、組織内の関係としてみると、この一節、現在でもなかなか示唆に富みます。相互に影響し合うことを考えれば、対等な人間関係であっても、そうかもしれません。

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