「考えること」-2

「考えること」-2

○仕組みが確立している、ゆえに、必要なこと

仕組みが確立している組織では、大きな部分では悩む余地が格段に少なくなります。さらに、これにより職員さんは、もっと別の部分に気を遣い、頭を使うことが出来ます。これは、一つの理想的な組織運営だと思われます。 

ただ、仕組みが確立しているがゆえの、課題もあります(この点は、これら優れた仕組みを持つ区立保育園の主管課の方にも申し上げた点です)。 

仕組みの確立に携わった方々は、その作業を通じて、日々の業務がどのようなねらいに基づいて行われているのか、身をもって分かっています。ゆえに、常にねらいや目的に立ち返ることができます。 

これとは反対に、その組織の一員となった時には、すでに仕組みが確立されていた場合は、自分が行っていること、自分が関わっていることが、一体どのようなことを目指して始められたものなのか、意識的に振り返る必要が出てきます。

つまり、仕組みが高い水準で確立されていればいるほど、「考える」という作業が、実は必要になってくるのです。 

なぜなら、それを怠ると、当初の「ねらい」から解き放たれて、当初の目的が見失われ形ばかりが残る、仕組みの形骸化が始まってしまうからです。

ここまできて、やっと今回ご紹介した、立教大学総長による祝辞という名の名文に触れることができます。

(しかし、)マックス・ウェーバーが指摘したように、社会的な諸制度は次第に硬直化し自己目的化していきます。人間社会が健全に機能し存続するためには、既存の価値や疑われることのない諸前提を根本から考え直し、社会を再度価値づけし直す機会を持つ必要があります。 

ここで、「自己目的化」というのは、ある目的を実現するために制度を運用し始めたにも関わらず、時を経て、制度を運用すること自体が目的となっていくことだと思われます。 

つまり、制度の健全な運用のためには、現状の批判的な検討、というと少し大袈裟ですが、ひらたく言えば、振り返りが必要である、ということです。 

改めて、上記引用文の後段のみ引用します。

人間社会が健全に機能し存続するためには、既存の価値や疑われることのない諸前提を根本から考え直し、社会再度価値づけし直す機会を持つ必要があります。                      ※下線は引用者

この指摘を、健全な組織運営の文脈で次のように言い換えても、あまり無理はなさそうです。 

組織が健全に機能し存続するためには、理念や目標、ねらいなどを根本から考え直し、現在行っていること改めて根拠付ける機会を持つ必要があります。

つまり、ある組織が、その組織の目指すものの実現に向けて機能し続けるためには、常に原点に立ち返り、現状を振り返るという意味で、「考える」という営みが不可欠なのです。

トラックバック&コメント

この記事のトラックバックURL:

まだトラックバック、コメントがありません。


»
«